1.T細胞急性リンパ性白血病 (T-ALL)に対するCAR-T療法の課題を解決
- [出典] "An 'off-the-shelf' fratricide-resistant CAR-T for the treatment of T cell hematologic malignancies" Cooper ML, ~ DiPersio JF. Leukemia. 2018 Feb 20.
- CAR-TによるT細胞悪性腫瘍治療の課題 (John F. DiPersio講演要旨):CAR-T細胞の標的である治療標的細胞上の抗原がCAR-T細胞にも存在し、CAR-T細胞自身を標的として攻撃するオフターゲット作用 ('fratricide');癌化したT細胞を排除した自家T細胞由来CAR-T作出に伴う技術的困難と巨額の経費;他家T細胞由来CAR-T細胞が致死的な移植片対宿主病 (GvHD)を誘発する危険性
- John F. DiPersio (WUSTL)が率いる研究チームは今回、CD7を標的とするCAR-T細胞からCRISPR/Cas9によって抗原CD7と他者抗原を認識するT細胞受容体α鎖 (TRAC)の双方を除去することで、'fratricid'とGvHDを回避可能なことを、in vitro (ヒトT-ALL細胞株、T-ALL初代細胞) とヒトT-Allモデルマウスin vivoにて、実証した。
2.ハマダラカのFREP1遺伝子のCRISPR/Cas9ノックアウトにより、マラリア原虫の感染を抑制
- [出典] "CRISPR/Cas9-mediated gene knockout of Anopheles gambiae FREP1 suppresses malaria parasite infection" Dong Y, Simões ML, Marois E, Dimopoulos G. PLoS Pathog. 2018 Mar 8;14(3):e1006898.
- マラリア原虫は媒介昆虫ハマダラカ体内での生活環において多くの宿主因子 (アゴニスト)を利用する。今回、アゴニストの一種であるFREP1をノックアウトすると、ヒトおよびげっ歯類マラリア原虫の感染を顕著に抑制した。一方で、FREP1ノックアウトは、ハマダラカの生存負荷を高めた。
- CRISPR/Cas9によるノックアウトは、gRNAを発現させたトランスジェニック系統とCas9を発現させたトランスジェニック系統の交配によった。
3.'Homing CRISPR'技術によりマウスにおけるin vivoバーコーディングと細胞系譜追跡
- [出典] "A homing CRISPR mouse resource for barcoding and lineage tracing" Kalhor R, ~ Church GM. bioRxiv. Posted March 12, 2018.
- R. KalhorとG. M. Churchらは今回、2016年にNature Methodsに発表したin vivoバーコーディングの手法の一種である'homing CRISPR barcodes'をもとにして、homing gRNAs (hgRNAs)をゲノムに多重に組み込んだマウス系統(MARC1)を作出し、Cas9に依存するhgRNAsの動態と活性を解析し、hgRNAs由来のバーコードから細胞系譜追跡が可能なことを示した。
- Homing CRISPR barcodes参考論文と図:Nat Med論文;同論文 Figure 2: Comparison between standard and homing CRISPR–Cas9 systems
4.バクテリアMarinitoga piezophilaのCRISPR関連ArgonauteはRNA生物学のプローブとして有用である
- [出典] "Programmable RNA recognition using a CRISPR-associated Argonaute" Lapinaite A, Doudna JA, Cate JHD. PNAS. Mar 12, 2018. (bioRxiv. Posted October 23, 2017. https://doi.org/10.1101/208041)
- Argonauteタンパク質 (Agos)はバクテリア、アーケアおよび真核生物と全生物ドメインに存在している。真核生物の遺伝子発現調節に関わるAgosの生理機能の研究は進んできた一方で、それに対応する原核生物におけるAgosの機能は謎であった。
- バクテリアのAgosの中には、CRISPR遺伝子座と相関して、5'末端がヒドロキシル化されているRNAsをガイド (gRNAs)を介して、核酸を標的とするものが存在する。UC Berkeleyの研究チームは今回、5-ブロモ-2'-デオキシウリジン (5-bromo-2′-deoxyuridine, BrdU)をgRNAsの5'末端ヌクレオチドとすることで、CRISPR関連M. piezophila Argonaute-gRNA複合体 (MpAgo RNPs)の安定なin vitro再構築と標的RNAに対する選択性と親和性の向上が可能なことを示した。
- MpAgo RNPsの標的選択性の鍵となるヌクレオチドをgRNAのシード領域のマッピングから同定し、gRNAの6番目と7番目のヌクレオチドを置換することで1塩基を異にするRNAsを識別可能なことを明らかにし、
- MpAgo RNPsによって、混合溶液の中から、脊椎動物でもっともよく見られるアデノシンからイノシンへの編集が起こったRNPsの検出が可能なことも示した。
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