1.[特許]Cas9の構造情報をもとにしたCRISPR-Casシステムの最適化・構築・利用
  • [出典] "Functional Screening with Optimized Functional CRISPR-Cas systems"US 2018/0057810 A1. PubDate 03/01/2018. Inventors: Zhang F,  Konermann S, Brigham MD, TrevinoA. Assignee:Broad, MIT, Harvard
2.CRISPR/Cas9によりβ-グロビン遺伝子座を編集し、成人赤芽球における胎児型γ-グロビン発現を再活性化
  • [出典] "Induction of fetal hemoglobin synthesis by CRISPR/Cas9-mediated editing of the human β-globin locus" Antoniani C, ~ Miccio A. Blood. 2018 Mar 8.
  • グロビンの13.6-kb (δ-とβ-にわたる領域とγ-δ遺伝子間胎児型ヘモグロビン (HbF)サイレンサー) の領域を削除することで実現
3.[展望]ウイルス疾患に対するCRISPR/Cas9ゲノム編集 - 無駄な抵抗か?
  • [出典] "CRISPR/Cas9 and Genome Editing for Viral Disease - Is Resistance Futile?" De Silva Feelixge HS, Stone D, Roychoudhury P, Aubert M, Jerome KR. ACS Infect Dis. 2018 Mar 9.
  • HIV-1が、ゲノムの単一サイトを標的としたゲノム編集に対して容易に耐性を獲得するが、複数サイトを標的とするゲノム編集がin vitroで、HIV-1の耐性を誘起することなく治癒することが報告されている。ゲノム編集に対する耐性の機構に関する研究成果をレビューし、ゲノム編集によるウイルス治癒療法を展望
4.抗-CRISPRファージ (Acrファージ)は協働してCRISPR-Cas免疫応答を克服する
  • [出典] "Anti-CRISPR phages cooperate to overcome CRISPR-Cas immunity" Landsberger M, ~  Westra ER,  van Houte S. (bioRxiv Posted March 8, 2018) Cell 2018-08-09. https://doi.org/10.1016/j.cell.2018.05.058
  • Borges AL, ~ Bondy-Denomy J.のbioRxiv2018年3月8日投稿論文 (関連ブログ記事 2018/03/13 -「3.バクテリオファージは協働してCRISPR-Cas3とCas9による免疫応答を抑制する) と整合する報告」
  • CRISPR-Cas獲得免疫機構を備えたバクテリアは、Acrファージに対してある程度免疫応答を維持する。ファージは、バクテリアに最初に感染したAcrファージが増殖しないまでも宿主のCRISPR-Casシステムを阻害し、続くAcrファージの宿主内増殖を可能にするように協働する。この時、最初に感染するArcファージの濃度が高いほど、バクテリア内でファージ消滅からファージ増殖への転換が起こりやすくなる。
 2018/07/21追記
  • Cell誌採択 "Anti-CRISPR Phages Cooperate to Overcome CRISPR-Cas Immunity" Landsberger M [..] Westra ER, van Houte S. Cell 2018 Jul 19.
  • CRISPRメモ_2018/07/21 2. バクテリオファージは協働してCRISPR-Cas3/-Cas9免疫応答を抑制する
5.CRISPRに基づいた集団免疫によって、バクテリア集団におけるファージ感染を抑制する
  • [出典] "CRISPR-based herd immunity can limit phage epidemics in bacterial populations" Payne P, ~  Bollback JP. eLife 2018;7:e32035.
  • 集団免疫 (herd immunity) は、集団中の病原体に耐性な個体群が、集団内の病原体に感受性の個体の病原体への感染確率を低減する現象であり、前者の個体数が十分に多い場合感染拡大が抑制される。集団免疫はこれまで哺乳類、鳥類および無脊椎動物において研究が進められ、インフルエンザウイルスなどに対するワクチン接種の根拠となっている。著者らは今回、T7ファージと、T7に対して耐性を持たないE coliとT7に対してCRISPRによる耐性を持たせたE. coliからなる系で集団免疫の動態を分析し、バクテリアおよび非バクテリアにも適用可能な集団免疫の理論モデルを構築した。
6.ファージ耐性Escherichia coli DH5sαのゲノム解析
  • [出典] "Whole-Genome Sequence of Phage-Resistant Strain Escherichia coli DH5α" Chen J, Li Y, Zhang K, Wang H. Genome Announc. 2018 Mar 8;6(10).
  • 著者らの研究室で維持しているE. coli DH5sα株はT4バクテリオファージ (CCTCC AB2015375)感染抵抗性を示すが、DH5sα株と相同なBL21, DH10BおよびMG1655株などは耐性を示さない。PacBioによりDH5sαのゲノム配列を決定し、プロファージとCRISPRの配列をそれぞれPHASTCRISPRFinderで、tRNAとrRNAをそれぞれtRNAscan-SEBarrnapで同定し、E. coliのファージ耐性機構解明の基盤を整えた。
7.CRISPRシステムをエピソームにて油性微細藻類Nannochloropsis oceanica CCMP1779に導入し、選択マーカ (抗生物質耐性外来遺伝子)フリーの遺伝子破壊を実現
  • [出典] "Non-transgenic marker-free gene disruption by an episomal CRISPR system in the oleaginous microalga, Nannochloropsis oceanica CCMP1779" Poliner E, Takeuchi T, Du ZY, Benning C, Farre E. ACS Synth Biol. 2018 Mar 8.
  • Saccharomyces cerevisiaeのCEN/ARS6領域をベクターに組み込むことで、CRISPR/Cas9システムを環状のエピソーム (染色体外DNA)として藻類に導入する手法を開発し、これによって、硝酸還元酵素 (NR:nitrate reductase)を破壊し、続いて、CRISPRエピソームを除去し、NR-KO系統を作出。
8.内在CRISPR-CasシステムによるClostridium tyrobutyricumにおける多重ゲノム編集とブタノール高収量株の作
  • [出典] "Exploiting endogenous CRISPR-Cas system for multiplex genome editing in Clostridium tyrobutyricum and engineer the strain for high-level butanol production" Zhang J, ~ Wang Y. Metab Eng. Available online 9 March 2018.
  • C. tyrobutyricumのタイプI-B CRISPR-Casシステムを最適化し、多重ゲノム編集の効率100%を達成;cat1遺伝子をadhE1/adhE2遺伝子と置換することで、低温バッチ方式で26.2 g/Lの収量を実現
9.CRISPR/Cas9による作物育種
10.Synechocystis sp. PCC6803におけるCRISPR-Casシステム・サブタイプI-DのCas6-1 RNAエンドヌクレアーゼの生化学的解析
  • [出典] "Biochemical analysis of the Cas6-1 RNA endonuclease associated with the subtype I-D CRISPR-Cas system in Synechocystis sp. PCC 6803" Jesser R, ~ Hess WR. RNA Biol. 2018 Mar 8:1-22.
  • タイプIとタイプIII CRISPR-CasシステムにおけるRNAエンドヌクレアーゼCas6は多様であり、保存性が低い。これまでにアーケア4種とバクテリア3種由来のサブタイプのI-A, I-B, I-C, I-E, I-FおよびIII-Bについては解析が行われてきたが、今回、サブタイプI-Dに特異的なCas6の一つについて、酵素活性に必須なアミノ酸のセットの同定などの解析が行われ、タンパク質-RNA間相互作用サイトが、他のサブタイプのCas6に対して、独特であることが明らかになった。
11. クロノバクター属におけるCRISPRシステムの多様性からみたクロノバクターの系統進化