1. [ニュース]過ぎたるは及ばざるがごとし?
  • [出典] pp. 1346-1347 "Too much of a good thing?" Kaiser J.
  • 2011年以来、メラノーマ、肺癌などの癌療法として、CTLA-4、PD-1/PD-L1を標的する6種類の免疫チェックポイント阻害剤がFDAに承認されたが、奏功する患者は20%程度に止まっている。このため、他の免疫療法薬、分子標的薬、化学療法、放射線療法などとの併用療法の臨床試験研究が急増している。
  • ニューヨークの非営利機関Cancer Research Instituteのレポートによると2017年に患者52,539人を被験者とするPD-1またはPD-L1阻害剤を含む併用療法の臨床試験が少なくとも1,105件進行した。PD-1/PD-L1を含む併用療法だけでも新たに被験者138,000人が必要とされており、十分な被験者が集まらないことによって少なからぬ治験が完了しないことが危惧されている。競争を歓迎する意見もあるが、アカデミアと複数の製薬企業の間ので治験薬の共有や、共同してバイオマーカを探索するなど、'スマート'な臨床試験が模索されている。
2. [ニュース]医療が富裕層の奢侈品になる
  • [出典] pp. 1348-1349 "Sticker shock" Couzin-Frankel J.
  • 固形癌を標的とする免疫チェックポイント阻害剤は年額およそ15万ドル、CAR-T療法は47.5万ドルを超え、1995年に5.4万ドルであった抗癌剤の年額は今やほぼ25万ドルである。この状況を“This is a chase after riches, and it doesn't advance science"とし、妥当な薬価の思考実験を可能にするプログラム'DrugAbacus'を開発・公開したMSKCCの Peter Bachに対するインタビュー記事
  • [注] 本記事のタイトルはインタビュー中の"I think we are barreling towards a system that makes health care a luxury good for the wealthy"から引用
3. [レビュー] 免疫チェックポイント阻害剤による癌免疫療法
  • [出典] pp. 1350-1355 "Cancer immunotherapy using checkpoint blockade" Ribas A, Wolchok JD.
  • CTLA-4またはPD-1パスウエイを標的とする癌免疫療法は劇的な効果を示す一方で、癌免疫療法に対して耐性が生まれ3分の1の患者に再発が見られる。この耐性発生の機構はこれまで殆ど分かっていないが、抗原提示機構とインターフェロンγシグナル伝達パスウエイの変化に起因することを示唆するデータが、前臨床試験モデルにおけるバイアスの無いCRISPR-Cas9スクリーンから蓄積されつつある (In vivo CRISPR screening identifies Ptpn2 as a cancer immunotherapy targetIdentification of essential genes for cancer immunotherapy.)。
  • 現在、CTLA-4を標的とするイピリムマブとPD-1を標的とするニボルマブの併用療法の治験が進行中であり、他の種類の併用療法の臨床研究も進行中である。今後、基礎研究から明らかにされる分子機序の知見を活かした合理的臨床研究から、耐性機構を克服する優れた療法が見出されていくであろう。
4. [レビュー] 個別化ミュータノーム (mutanome)ワクチン癌免疫療法
  • [出典] pp. 1355-1360 "Personalized vaccines for cancer immunotherapy" Sahin U, Türeci Ö.
  • 遺伝子変異が蓄積されている癌細胞が提示する癌特異的ネオエピトープ (neoepitope)は、非自己として自己T細胞に認識され、癌ワクチンの理想的標的である。また、遺伝子変異プロファイルはそれぞれの癌に特有であり、患者間でも殆ど重ならない。さらに、ゲノミクス、データ科学および癌免疫療法の技術的進歩により、全遺伝子変異のゲノムマッピング ("mutanome")、ワクチンの標的の合理的選択、および、個別化療法をオンデマンドで用意することが可能になってきた。事実、個別化癌ワクチンのfirst in human試験は、個別化ミュータノーム(mutanome)ワクチンの可能性を示している。
5. [レビュー] CAR-T細胞免疫療法
  • [出典] pp. 1361-1365 "CAR T cell immunotherapy for human cancer" June CH, O’Connor RS, Kawalekar OU, Ghassemi S, Milone MC.
  • TCRとCAR-T細胞免疫療法 (第1世代/第2世代/第3世代);CD19を標的とするB細胞リンパ腫のCAR-T療法;B細胞リンパ腫以外への展開 (CD19以外の標的;併用療法);CAR-T療法に伴うサイトカイン放出症候群 と神経毒性;細胞工学によるT細胞の改良;ユニバーサルCAR-T細胞作出;ゲノム編集による多目的CARs作出;CAR-T細胞の商品化
6. [レビュー] 癌免疫療法におけるマイクロバイオーム:診断ツールと治療戦略
  • [出典] pp. 1366-1370 "The microbiome in cancer immunotherapy: Diagnostic tools and therapeutic strategies" Zitvogel L, Ma Y, Raoult D, Kroemer G, Gajewski TF.
  • メタゲノムは、癌の発生、進行および療法に対する応答を調節する。特定の微生物が化学療法剤の薬力学を調節するだけでなく、上皮性関門と微生物生態系との共生が、局所的および遠位組織における免疫システムに対する作用を介して、癌療法の効用を左右する。免疫チェックポイント剤による癌免疫療法の効用が、抗生物質投与によって失われ、特定の腸内菌叢によって亢進することが示されている。個別化医療の将来は、療法に影響を与えるマイクロバイオームの同定と不全の診断およびそれに基づいた治療戦略の実現に依存する。