出典
背景
  • 多くの神経変性疾患が短いヌクレオチドの反復配列の伸長と相関している。筋萎縮性側索硬化症 (ALS)と前頭側頭型認知症 (FTD)では、C9orf72遺伝子のイントロンに位置するヌクレオチド反復配列が翻訳されることで生成される産物poly(GA) が凝集し封入体を形成する。この封入体によってプロテアソームによるタンパク質分解過程が阻害されると見られているが、その分子機序は詳らかにされていなかった。MPIDZNEなどのドイツの研究チームは今回、3次元クライオ電顕トモグラフィー (以下、3D cryo-ET;下図参照)によってpoly(GA)の凝集とプロテアソームの動態を詳細に分析した。cryo-ET
成果
  • ALSとFTDにおけるpoly(GA)凝集のモデルとして、GFPを融合した175リピートまたは73リピートを含むpoly(GA)を発現させた神経細胞をcryo-ETで解析し、poly(GA)凝集体の細胞内の位置を光-電子相関顕微鏡法 (correlative light microscopy)によって精密に測定。先行研究で報告していたハンチントン病の責任変異であるグルタミン・リピート poly(Q)凝集と今回のpoly(GA)凝集の間の差異(NEWS AND VIEWSのFigure 1  Contrasting mechanisms of aggregate toxicity 参照)を論じた。
  • Poly(GA)凝集体:厚さが一様で長さや幅が多様で高頻度で二分岐している捻れたリボン様構造が密なクラスターを形成;26Sプロテアソーム複合体のほぼ50%をそのリボン構造に絡め取るが、リボソームなど他の同規模の生体高分子は絡めとらない。このプロテアソーム隔離が凝集体の分解を阻害することが示唆される;26Sプロテアソーム複合体はPoly(GA)のリボン構造によって、基質のタンパク質を処理する一時的なコンフォメーションに安定化され、タンパク質分解が進行していないことが示唆された。
  • Poly(Q)凝集体:poly(GA)凝集体と異なり、分岐が少なく放射状の繊維様構造を取っている。この繊維構造はプロテアソームを取り込まない一方で小胞体などの細胞内小器官の膜と密に接していることから、小胞体膜などの変形を介してタンパク質の品質管理システムが改変されることが示唆される。
新たな疑問と課題(NEWS AND VIEWSより)
  • C9orf72の異常伸長によるC9orf72タンパク質のレベル低下とプロテアソーム経路阻害の病原性の比較
  • プロテアソーム以外のタンパク質のpoly(GA)凝集体への蓄積とその病原性(例:オートファジー関連p62はpoly(GA)凝集体に蓄積することが知られている)
  • 凝集体を分解することが知られている分子機械がpoly(GA)凝集体に蓄積されていない理由
  • C9orf72の反復配列異常伸長に起因するがプロテアソームを蓄積しないpoly(GR)とpoly(PR)が病原性を示す機構
  • 患者由来細胞の3D cryo-ET解析との比較
[注]関連crisp_bio記事
  • 2018/03/10 C9ORF72の6塩基リピート異常伸長の毒性を調節しALS/FTDの治療標的足り得る因子を同定
  • 2018/03/08 Aβ繊維の立体ジッパーと異なるクロスβ構造をもたらす低複雑性モチーフLARKS - FUS, hnRNPA1, nup98
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