1.ヒストン脱メチル化酵素UTXは肺の癌化を亢進するエピゲノム制御因子である
  • "In vivo CRISPR screening unveils histone demethylase UTX as an important epigenetic regulator in lung tumorigenesis" Wu Q, ~ Chen L, Ji H. PNAS April 9, 2018.
  • 中国の肺癌マイクロアレイなどのデータ、PRECOG データ(https://precog.stanford.edu/)およびCOSMICデータ (cancer.sanger.ac.uk/cosmic)や文献から絞り込んだ55種類の腫瘍抑制因子それぞれを、KrasG12D/+マウス in vivo で1遺伝子あたり3 sgRNAsによりノックアウトし、肺の癌化に及ぼす影響を分析し、肺の癌化を強く亢進する遺伝子
  • 5種類 (Utx, Ptip, Acp5, Acacb, ならびにClu)を同定 (これらの遺伝子はヒト肺癌サンプルで下方制御されまた肺癌患者の予後と相関している);Utxノックアウトが、EZH2のレベル上昇を介したH3K27me3レベルの上昇を介して、肺癌を急激に進行させることを同定し、Utxノックアウト肺癌がEZH2阻害剤に対して感受性を示すことも確認した。
2.FAM49Bは、アクチン・ダイナミクスとT細胞活性化の鍵を握る調節因子である
  • "Genome-wide CRISPR screen identifies FAM49B as a key regulator of actin dynamics and T cell activation" Shang W, ~ Wei L, Weiss A, Wang H. PNAS April 9, 2018.
  • ゲノムワイドCRISPRスクリーンにより抗原によるT細胞活性化を調節する遺伝子をスクリーンし、既知の調節因子に加えて新たにT細胞活性化を負に制御する因子FAM49Bを同定; FAM49B–Rac欠損細胞の解析などをもとに、FAM49BがRac活性化の抑制と細胞骨格再構成の改変を介してT細胞活性化を抑制するとした。
  • [注]T細胞活性化とアクチンとの関連参考論文:"The actin cytoskeleton in T cell activation" Burkhardt JK, Carrizosa E, Shaffer MH. Annu Rev Immunol. 2008;26:233-59.
3.ゼブラフィッシュをモデルとして、CRISPR/Cas変異誘発アッセイにより甲状腺の形態形成と機能に関わる遺伝子を同定
  • "A Rapid CRISPR/Cas-based Mutagenesis Assay in Zebrafish for Identification of Genes Involved in Thyroid Morphogenesis and Function" Trubiroha A, Opitz R, Costagliola S. Sci Rep 04 April 2018.
  • 前腸内胚葉から発生する器官の中で、肝臓や膵臓などに比べて甲状腺については形態形成の分子機構の理解が進んでいないところ、魚類からヒトまで保存されている甲状腺形態形成の様相を備えているゼブラフィッシュでにて、関連する遺伝子の同定を試みた。
  • 甲状腺の発育不全とホルモン生成異常に関連する表現型を迅速かつ高感度で検出可能なゼブラフィッシュのレポータ系統を作出し、CRISPR/Cas9 RNPによる両アレル不活性化により、遺伝子機能喪失に対応する表現型を再現可能なことを確認。また、固定標本でも甲状腺機能を測定し、変異誘発の効率をイルミナ・シーケンシングで測定。
4.ノスカピンとハロゲン化アルカロイドを酵母で全合成
"Complete biosynthesis of noscapine and halogenated alkaloids in yeast" Li Y, Li S, Thodey K, Trenchard I, Cravens A, Smolke CD. PNAS April 2, 2018.
ノスカピンは、1960年代から非麻薬性の咳止め薬として広く利用され、最近では前臨床試験にて毒性が低い抗癌剤の可能性が示されているが、唯一の原料がケシである。ケシの栽培は規制が厳しく世界的に栽培地域が限られまた麻薬性産物を処理する必要がある。スタンフォード大学の研究チームは今回、植物、バクテリアおよびラット由来の遺伝子の導入、6種類の酵母遺伝子への導入または過剰発現によって、麻薬性産物が存在しない酵母でのノスカピン全合成を実現した。
酵素工学、パスウエイや菌株の改変、さらに発酵の最適化を経て、収量を18,000倍 (低いmg/Lレベル)まで伸ばした。CRISPR技術は、ノスカピン合成経路のボトルネックとなっている鍵酵素の活性を改善するための遺伝子改変に利用された。

5.ヒト3PN胚において、CRISPR/Cas9が誘導した二本鎖DNA切断 (DSB)を、ssODNを利用した相同組換えを介して効率的に修復
  • "Highly efficient ssODN-mediated homology-directed repair of DSBs generated by CRISPR/Cas9 in human 3PN zygotes" Tang L, Zeng Y, Zhou X, Du H, Li C, Liu J, Zhang P. Mol Reprod Dev. 6 April 2018.
  • オレゴン健康科学大学のHong MaやShoukhrat Mitalipovを始めとする米中韓の研究チームが2017年に発表したヒト胚ゲノム編集論文(*)の中国チームによる検証実験;CRISPR/Cas9により生成されたDSBは、内在DNAよりも外来ssDNAにより効率的に修復され、2017年論文で外来ssODNによるHDRが見られなかったことは興味深く、今回、再現できなったなんらかの条件(すなわち、未知の機構)、がDSB修復に影響を与えていることが示唆される。
  • (*)crisp_bio関連記事:CRISPRメモ_2017/08/03 1.ヒト胚ゲノム編集:米・韓・中の共同研究チーム、心疾患病因変異の高効率・高精度修復を実現
6.CRISPR-dCpf1による多重遺伝子調節の最適化条件を体系的に探察
  • "Systematically investigating the key features of the nuclease deactivated Cpf1 for tunable multiplex genetic regulation" Miao C, Zhao H, Qian L,  Lou C. bioRxiv Posted April 9, 2018.
  • Francisella novicidaLachnospiraceae bacterium由来のCpf1について、Escherichia coliにおけるCRISPR-dCpf1による転写抑制活性のdCPf1変異体、crRNAの長さ、gRNAの長さ、PAM配列などのパラメーターへの依存性を評価し、また、任意のPAMについて遺伝子抑制を予測するアルゴリズムも開発。