• "Enhanced bacterial immunity and mammalian genome editing via RNA polymerase-mediated dislodging of Cas9 from double strand DNA breaks" Clarke R, [...] Church GM,  Marraffini LA, Merrill B. bioRxiv Posted April 13, 2018.
  • Cas9は二本鎖DNAの標的部位を切断後 (DSB生成後)長時間DSBに結合し、Cas9-DSB複合体の状態を維持する。例えば、Cas9-DSB結合状態はin vitroで〜5.5時間継続するという報告もある。Cas9がDNAを標的する分子機構は急速に解明されてきたが、安定なCas9-DSB複合体がゲノム編集に与える影響については注目を集めてこなかった。
  • 研究チームは今回、DNA上をスライドするRNAポリメラーゼ (RNAP)がCas9-DSB複合体に衝突すると、Cas9-DSB複合体が分解してCas9がDSBから遊離し、DSB修復酵素がDSBにアクセス可能となることでDSB修復が進行し、さらに、遊離したCas9は多重代謝回転酵素(multiple-turn-over enzyme)として、sgRNAの標的配列を帯びた他のDNAに次々に結合・切断可能になり、結果的に、ゲノム編集効率が高まることを明らかにした。
  • ただし、RNAPによるCas9-DSB複合体の分解は、sgRNAがRNAPによる転写のテンプレートとなるDNA鎖と二本鎖を形成する (アニールする)向きでRNAPがCas9-DSB複合体に接近する場合に限られていた。
  • すなわち、転写の際の鋳型となるDNA鎖を標的とするsgRNAを選択してくことで、効率的なゲノム編集が可能になる。また、バクテリアのバクテリオファージに対する免疫応答も、バクテリオファージゲノムのテンプレート鎖にアニールするcrRNAによって活性化することになる。