出典
  • "Truncation- and motif-based pan-cancer analysis reveals tumor-suppressing kinases" Hudson AM, Stephenson NL, Li C, Trotter E, Fletcher AJ, Katona G, Bieniasz-Krzywiec P, Howell M, Wirth C, Furney S, Miller CJ, Brognard J. Sci Signal 17 Apr 2018;11(526), eaan6776bioRxiv Posted January 27, 2018.
  • 腫瘍細胞に由来する膨大な変異データが蓄積され続けてるが故に、癌化に対して中立なパッセンジャー変異と癌化に関わるドライバー変異を精度よく判別可能とする手法がより求められている。John Brognard (NCI/U Manchester)らは今回、キナーゼの活性に重要なモチーフのデータを取り入れたドライバー変異スクリーンを試みた。
成果
  • Cancer Cell Line Encyclopedia (CCLE)とThe Cancer Genome Atlas (TCGA)のデータベースから、触媒活性を失活させるキナーゼ・ドメインの内部かその上流での'truncation mutations'が起こる頻度に基づいて腫瘍抑制キナーゼを抽出し、配列アライメントにより、配列保存領域における変異のホットスポットを同定した (bioRxiv投稿バージョンからCC0で引用した下図 Figure 1 参照)。そのトップ20のホットスポットは既知のキナーゼ活性必須モチーフ内に位置していた。2種類の新奇ホットスポットについても、生化学的な解析からキナーゼの不活性化をもたらすことが明らかになった。
Hotspots
  • 次に、TCGAとCCLEに登録されている411種類のキナーゼについて、15種類のホットスポットで起きている変異を確認し、変異の頻度に基づいてランキングした。STK11 (serine/threonine kinase 11)のような既知の腫瘍抑制キナーゼとともに、胃癌において分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ7 (MAP2K7)が腫瘍抑制因子として機能することを見出した。
  • MAP2K7の変異のほとんどが触媒活性の失活をもたらし、MAP2K7に機能喪失 (LOF)変異が起きている胃癌細胞株におけるJNKパスウエイの再活性化、または、JNK下流のキナーゼの活性化によって、クローン形成能と軟寒天培地での成長が抑制されることから、JNKパスウエイの不活性化と胃癌とが機能的に相関することが確かめられた。
  • MAP2K7の変異頻度は他の変異と同程度であり、モチーフとの相関を考慮することで膨大な変異データの中から腫瘍抑制因子の機能喪失をもたらすドライバー変異を同定可能なことを実証した。
[参考] 癌と変異に関連するcrisp_bio記事