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科学分野の比較的新しい論文と記事を記録しておくサイト: 主に、CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム編集, エピゲノム編集, 遺伝子治療, 分子診断/代謝工学, 合成生物学/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野) の観点から選択し、時折、タンパク質工学、情報資源・生物資源、新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症、機械学習・AIや研究公正からも選択

2026-07-04 PNAS 論文の筆頭著者のCleves博士の最新論文を取り上げるにあたって [*]、過去記事を振り返ったみた過程で気づきましたスタンフォード大学医学部の当時のニュース記事を以下に引用しました。PNAS 論文を「ある原理実証を目的とした実験において、スタンフォード大学の研究者らはCRISPR-Cas9遺伝子編集システムを用いてサンゴの遺伝子を改変することに成功しました。この成果は、将来的にこの技術がサンゴの保全活動に役立つ可能性を示唆しています。」と、紹介していました [*] 2026年7月5日公開予定に公開しました。
"Editing coral DNA in search for keys to survival" Hanae Armitage. Stanford Medicine News. 2018-04-27.
https://sustainability.stanford.edu/news/editing-coral-dna-search-keys-survival
2018-04-26 PNAS 論文に準拠した初稿
[出典] "CRISPR/Cas9-mediated genome editing in a reef-building coral" Cleves PA, Strader ME, Bay LK, Pringle JR, Matz MV. PNAS April 25, 2018. 
  • 地球温暖化その他の人為的なストレスを受けて世界的に衰退しつつあるサンゴ礁を保全するために、共生藻類との相互作用やストレス応答を含むサンゴの生態の分子機構を明らかにしていく必要がある。このため、ゲノムとトランスクリプトームの解析が近年精力的に進められ、特定の遺伝子やパスウエイの生物機能について様々な仮説が提唱されてきた。一方で、仮説検証は、精密な遺伝子操作の手法を欠いていたことから進展しなかった。
  • 米豪の研究チームは今回、CRISPR-Cas9によりサンゴ(Acropora millepora, 下図参照)における逆遺伝学が可能なことを実証した。
Acropora millepora
  • 刺胞動物の中で、イソギンチャク (Nematostella vectensis)とヒドロ虫綱 (Hydractinia echinata)については、Cas9-sgRNAのRNPを一細胞期受精卵にマイクロインジェクションすることで、遺伝子編集が実現している。しかし、サンゴの場合はRNPをマイクロインジェクションする受精卵を入手することが困難であった。今回、多くの造礁サンゴ (reef-building corals)で確立されていた、「サンゴが温度条件と月の光に応じて年に1〜2回放出する配偶子を獲得し、受精、幼生サンゴ培養、研究室環境での幼生サンゴ着生と研究室環境で変態させる技術 *」を生かして、一細胞期受精卵へのRNPマイクロインジェクションとその後誘導された遺伝子変異と表現型の変化を追跡した (* Coral larvae for restoration and research: a large-scale method for rearing Acropora millepora larvae, inducing settlement, and establishing symbiosis. Pollock FJ et alPeerJ. 2017 Sep 6;5:e3732
  • 機能喪失変異の初の試みとして、線維芽細胞増殖因子1a (FGF1a)、緑色蛍光タンパク質 (GFP)および赤色蛍光タンパク質 (RFP)をそれぞれコードする A. millepora遺伝子を標的とするCRISPR/Cas9編集を加えた。FGF1aは1コピー遺伝子で、幼生着生と変態の過程で環境センサーそしてまたは遺伝子発現調節に関与すると見られている。GFPRFPは多コピー遺伝子で、幼生で高発現し環境条件変化への応答に関与し、その蛍光性故に遺伝子変異の影響の目視を可能とする。
  • RNPマイクロインジェクションによって各遺伝子に誘導された変異をRFLP (制限酵素断片長多型)解析、サンガーシーケンシング、ハイスループットIlluminaシーケンシングで解析
  • 解析した11個体の変異幼生サンゴには標的遺伝子座に野生型アレルと多重な変異アレルが共存し、RNPが数回の細胞周期の間活性で変異誘導が続いたことが示唆された。今後、両アレル変異体の作出に向けた実験条件の最適化が望まれるが、本研究によって、サンゴの逆遺伝学への道が開けた。
  • [参考]地球温暖化がサンゴ礁に与える影響:Hughes TP et al. "Global warming transforms coral reef assemblages." Nature. 2018 Apr 18
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