出典
概要
- "Organoids in cancer research" Drost J, Clevers H. Nat Rev Cancer. 2018 Apr 24.
概要
- 近年、オルガノイドを始めとするin vitro3次元培養技術が進歩し、より自然な生理条件下での実験を可能とするヒト癌モデル構築への道が開いた。このような前臨床モデルによって、癌の基礎研究の成果の臨床展開を円滑になることを期待できる。野生型のオルガノイドは、ES細胞および成体幹細胞から作出可能であり、自己組織化し、由来器官の特徴を再現し、オルガノイドに遺伝変異を誘導することで、生理条件に近い環境での疾患モデリングを可能にする。オルガノイドは、患者由来の正常組織と腫瘍組織からも効率よく作出することが可能であり、この患者特異的オルガノイドによって、個人や特定の腫瘍に最適な臨床試験や療法の開発が可能になる。[参照 Fig. 1 Organoid cultures for personalized cancer treatment and drug development]
- これまで癌研究にモデル動物が大きく貢献してきたが、一方で、モデル動物には、作出に要する技術や期間および患者の発症過程の再現に問題があり、モデル動物による前臨床試験で著効を示した薬剤候補が臨床試験で脱落することが続いていた。遺伝子改変モデル動物はヒト癌における組織の複雑さや不均一性などを必ずしも再現せず、患者由来の腫瘍を異種移植した (primary patient-derived tumour xenografts: PDTXs)モデル動物は、その作出に著しく経費と時間がかかり、またモデルに特異的な腫瘍が発生する可能性を伴う。また、腫瘍モデルとしての患者由来の細胞株については、その樹立が著しく非効率で初代組織からの処理の影響を受ける可能などの問題がある。[参照 Table 1 Comparison of the described preclinical cancer models]
- 本レビューでは、癌の基礎研究と臨床研究における成体幹細胞由来のオルガノイド技術を議論する。次に、創薬および個別化医療の基盤としての患者由来腫瘍オルガノイド・バンクの構築をハイライトし、実験的腫瘍モデルの観点からオルガノイド技術を評価する。最後に、癌研究に向けたオルガノイド開発の限界と将来性を議論する。
- 生体 (living)オルガノイド・バイオバンク
- 長期間オルガノイド培養の実績:原発腫瘍 (結腸、食道、膵臓、胃、肝臓、子宮内膜、乳房)と転移腫瘍 (結腸、前立腺、乳房)のバイオプシー由来 [参照 Table 2 Overview of the currently available tumour organoid collections]
- オルガノイド・バイオバンク構築例(結腸癌、膵管腺癌、乳癌、その他;Human Cancer Models Initiative (HCMI)のバイオバンク計画
- 創薬と個別化癌療法:2次元癌細胞株の限界;3Dオルガノイドによる薬剤応答の解析や薬剤スクーリンの事例
- 免疫療法の評価
基礎研究におけるオルガノイド
- H. pyloriやS. entericaなどの感染因子による癌化の機構解明
- 変異蓄積の過程と腫瘍形成の機構解明 [参照 Fig. 2: Organoid cultures to study mutational processes underlying tumorigenesis]
- 正常オルガノイドへのCRISPR/Cas9やRNAiを介した遺伝子変異誘導による腫瘍化モデリング
課題と展望
- 癌細胞株よりも時間と資源を要する樹立と維持の効率化
- 間質、血管および免疫細胞などと共存する環境での実験を可能とする共培養法の研究開発
- 一部のオルガノイド培養で必要とされているマウス由来細胞外マトリクスやウシ胎児血清などを排除した培養法の最適化
- 進行癌由来の腫瘍オルガノイドの成長が正常組織由来のオルガノイドの成長より遅い機構の解明
- 従来の腫瘍オルガノイドが上皮組織由来であったのに対して非上皮組織からのオルガノイド作出*
- 患者由来オルガノイドの薬剤応答が患者における薬剤応答を再現、2018年に初報告(Vlachogiannis, G. et al. "Patient-derived organoids model treatment response of metastatic gastrointestinal cancers" Science. 2018 Feb 23;359(6378):920-926)
- (*) 参考 crisp_bio記事 2018/04/27 「ヒト脳オルガノイドによる膠芽腫モデル」
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