1.Staphylococcus epidermidis由来Csm3とCsm6のリボヌクレアーゼ活性の構造基盤
- [出典] "Structural insights into the CRISPR-Cas-associated ribonuclease activity of Staphylococcus epidermidis Csm3 and Csm6" Zhao Y [..] Cheng W. Science Bulletin. 2018 May 3.
- S. epidermidis (Se)が帯びているタイプIII-A CRISPR-Casシステムは、ssRNAとdsDNAの双方を切断することが報告され*、続いて、Csm複合体によって合成されるサイクリックアデニル酸 (cOAs)がセカンドメッセンジャーとなってCsm6に結合し活性化することが報告されている**。
- 中国の研究チームは今回、SeCsm3とN末端を切断したCsm6 (SeCsm6ΔN)の結晶構造をそれぞれ2.26Åと2.0Åの分解能で解き、SeCsm6ΔNがコンパクトなホモ二量体を形成し、HEPNドメインの二量体化に伴ってリボヌクレアーゼ活性部位が形成されることを見出した。
- 参考crisp_bio記事:*) 創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 20160428 タイプⅢ-A CRISPR/Cas獲得免疫の分子機構;**) CRISPRメモ_2017/08/07 - 3.バクテリアの獲得免疫機構におけるセカンドメッセンジャー発見
2.既知のヒトmiRNAステムループの85% (1,594)を標的とするsgRNAライブラリーを構築
- [出典] "MicroRNA-focused CRISPR-Cas9 Library Screen Reveals Fitness-Associated miRNAs" Kurata JS, Lin RJ. RNA. 2018 May 2.
- 1標的あたり4-5 sgRNAsのライブラリーを構築し、CRISPR-Cas9スクリーンによって、HeLa細胞とNCI-N87細胞にフィットネスに正または負の影響を与えるmiRNAsを同定。
3.Cas9/sgRNA/rAAV6プラットフォームによる造血幹細胞・前駆細胞 (HSPCs)におけるβ-グロビン (HBB)相同組換え (HR)修復の最適化
- [出典] "Priming Human Repopulating Hematopoietic Stem and Progenitor Cells for Cas9/sgRNA Gene Targeting" Charlesworth CT [..] Dever DP, Porteus MH. Mol Ther Nucleic Acids. 2018 May 3.
- スタンフォード大学のM. H. Porteusの研究チームは先行研究において、Cas9/sgRNAによりDSBを誘導し、DSBのHR修復用ドナーをrAAV6で送達する'Cas9/sgRNA/rAAV6プラットフォーム'により、HSPCsにおいて精密な遺伝子修復を実現し、また、2−4日後にレポータ遺伝子発現の顕著な変化により遺伝子修復が起きた細胞を容易に同定可能なことを見出していた。
- 研究チームは今回、βヘモグロビン異常症遺伝子治療法の観点から、HSPCsにおけるCas9/sgRNA/rAAV6プラットフォームによるHBB遺伝子座の変異修復の最適化を試み、長期造血幹細胞 における効率的遺伝子修復を実現した。
- INDEL誘導効率と細胞生存率の最適化を、sgRNAの末端をオリゴ-2'-O-メチルリボヌクレオチドで修飾しCas9-sgRNAをRNPとして150-300 µg/mLの範囲の量で送達することで実現
- RNPのエレクトロポレーションの前あるいは同時ではなく直後にrAAV6でHR用テンプレートを送達することで編集効率向上することを見出し、これは、エレクトロポレーションによりrAAV6のトランスダクションが向上したことに因るとし、この現象をElectroporation-Aided Transduction (EAT) と称した。
- HR頻度と細胞生存およびコストの観点からrAAV6の最適なmultiplicity of infection (MOI)や、スクリーン用レポーター遺伝子発現に適したプロモーターも選定した。
- 低密度での培養がHR頻度を高めることを見出し、低密度培養に低分子のUM171とSR1の投与を組み合わせることで標的ヒト長期造血幹細胞の増殖を亢進
- [出典] "CRISPR screen reveals that EHEC's T3SS and Shiga toxin rely on shared host factors for infection" Pacheco AR [..] Waldor MK. bioRxiv. Posted May 8, 2018. → mBio 2018-06-19.
- Stxの標的であるグロボトリアオシルセラミド (Globotriaosylceramide)に加えて機能未知の2種類の遺伝子座がスクリーンにヒットし、これらの遺伝子変異が宿主細胞へのT3SSの細胞への侵入とStxの結合の双方を阻害することを見出した (原論文Fig. 1引用下図参照)。
5.CRISPRノックアウトスクリーンにより、マウスES細胞におけるレトロエレメント発現抑制因子を網羅的に探索
- [出典] "A CRISPR knockout screen Identifies SETDB1-target retroelement silencing factors in embryonic stem cells" Fukuda K, Okuda A, Yusa K, Shinkai Y. Genome Res. 2018 May 4.
- SETDB1/KAP1パスウエイによって抑制されることが知られているマウス白血病ウイルス (MLV)をGFPで標識することでプロウイルス・レポータとし、このパスウエイに関与する80種類以上の遺伝子を同定し、レトロエレメントの発現を抑制する新奇因子を見出した。
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