crisp_bio

科学分野の比較的新しい論文と記事を記録しておくサイト: 主に、CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム編集, エピゲノム編集, 遺伝子治療, 分子診断/代謝工学, 合成生物学/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野) の観点から選択し、時折、タンパク質工学、情報資源・生物資源、新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症、機械学習・AIや研究公正からも選択

1.CRISPOR:CRISPR/Csa9ゲノム編集実験とスクリーン用gRNAs選択支援Webツール
  • "CRISPOR: intuitive guide selection for CRISPR/Cas9 genome editing experiments and screens" Concordet JP, Haeussler M. Nucleic Acids Res 2018 MAY 14.(下図は、CRISPOR Webサイトからの画面キャプチャー(左)と原論文Figure. 1の出力例(右) CC BY 4.0
  • 多数のゲノムとgRNAのスコアリングモデルに対応;単なるgRNAの選択に止まらず、クローニング、発現、活性とオフターゲット編集の評価に必要なプライマー選択、ノックアウトスクリーンとノンコーディング配列の飽和突然変異誘発スクリーン用のバッチデザインも支援
  • 詳細マニュアル(英文)はこちら http://crispor.tefor.net/manual/
CRISPOR CRISPOR 1
2. Cpf1-Flip: Cre誘導Cpf1 crRNAアレイ・インバージョンに基づくプログラム可能な逐次的変異誘発により、発生、進化および腫瘍などの段階的進行をモデリング
  • "Programmable sequential mutagenesis by inducible Cpf1 crRNA array inversion" Chow RD, Kim HR, Chen S. Nat Commun 2018 May 15.
  • 発生、進化および腫瘍化は、遺伝的事象が然るべき時系列に従って起こることによって進行する。これまでに腫瘍形成に遺伝変異がおよぼす影響のモデルが工夫されてきたが、癌の段階的進行の再現は困難であった。
  • イェール大学医学大学院の研究チームは今回、Creにより単一のcrRNAアレイ (FlipArray)のインバージョンを誘導する柔軟な逐次的変異誘発システムCpf1-Flipを開発し (下図右原論文Figure 1. 参照)、マウス細胞とヒト細胞において段階的変異誘発を実現した。
Cpf1 crRNA Cpf1 Flip Pooled
  • また、プール型ライブラリーを利用して (上図右原論文Figure 4. 参照)、癌免疫療法に対する多様な耐性変異の発生モデルを構築した。
  • Cpf1-Flipによって、複数の遺伝子座に順次変異を導入することが可能になった。
3.crRNAの一部をDNAに置換えたキメラ・ガイドがCas9の生化学的活性を亢進する
  • "Chimeric Guides Probe and Enhance Cas9 Biochemical Activity" Kartje ZJ, Barkau CL, Rohilla KJ, Ageely EA, Gagnon KT. Biochemistry. 2018 May 14.
  • Cas9の活性を損なうことなくcrRNAの一部をDNAに置換可能であることを見出し、tracrRNAとペアリングするcrRNA領域におけるDNA置換がCas9の活性化とターゲットの選択性を維持または向上させることを見出した (以下に引用したツイートにてモデル図参照可能)。
4.非病原菌であるStreptococcus thermophilus由来CRISPR1-Cas9 (St1Cas9)による多用途in vivoゲノム編集
  • "Versatile genome editing with the prototypical Streptococcus thermophilus CRISPR1-Cas9 system" Carter S, Agudelo D, Duringer A, Loehr J, Doyon Y. bioRxiv Posted May 14, Aug 31 2018.
  • In vtiroでPAMと安定で効率のよい編集を実現する条件を検証;遺伝性高チロシン血症Ⅰ型モデルマウスの新生仔肝臓にSt1Cas9をrAAVで送達・発現させ、致死性と代謝不全からレスキューし、in vivoでの編集活性を実証;St1Cas9および同じくタイプII-AのSaCas9の調節を可能にする抗-CRISPRタンパク質を同定 
  • crisp_bio注:bioRxivには2019-07-31に第3稿が投稿されています
5.CRISPR/Cas9によりEGFR L858R変異を帯びた肺癌の選択的抑制を実現
  • "Specific targeting of point mutations in EGFR L858R-positive lung cancer by CRISPR/Cas9" Cheung AH [..] Kang W, To KF. Lab Invest. 2018 May 10.
  • 癌細胞は一塩基置換を代表とする遺伝変異によって特徴づけられるが、これまでのタンパク質をベースとした分子標的療法は標的可能な変異遺伝子が限られまた耐性が誘導されてしまう問題を伴っている。今回、CRISPR/Cas9によって、変異が起きていない細胞に影響を与えずEGFR L858R変異を帯びた細胞について~38%変異編集効率、EGFR発現と細胞増殖の低減およびin vivoでの腫瘍量の低減を確認。
6.[レビュー] オフターゲットから見た網膜のCRISPR手術
  • "CRISPR genome surgery in the retina in light of off-targeting" Cho GY, Schaefer KA, Bassuk AG, Tsang SH, Mahajan VB. Retina. 2018 May 7
  • CRISPR技術のオフターゲット率はゼロにはなっていないが、選択性と効率の向上およびオフターゲット変異誘発の注意深いスクリーニングにより、CRISPRを介したゲノム手術はいずれ臨床へと応用されるであろう。
7.[NEWS FEATURE] CRISPR/Casの'the best-case scenario'
  • "The best Cas scenario" Smith PA. Nat Med. 2018 May 7.
  • 20種類の微生物ゲノム比較解析から、後にCRISPR-associated (Cas)遺伝子と呼ぶことになる特徴的な配列を見出し、2クラス/5タイプ/16サブタイプのCas分類体系を提唱するに至ったEugene Koonin (NCBI)のエピソードから始まり、Keith Joung (HMS)らのCas9改変によるPAM拡張の試み、Jennifer Doudna (UC Berkeley)らの小型なCasXとCasYの発見、Kooninとの共同研究からのFeng Zahng(Broad)のCas12a (Cpf1)解析と利用、David Liu (Harvard)とZhangがそれぞれ開発したBE (Base Editor)、Cas1やCas2を利用した記録装置の開発、Cas3による薬剤耐性菌対策、Cas12またはCas13による高感度核酸検出診断技術開発、George Church (Harvard)らのリコンビナーゼによるgRNAとヌクレアーゼに依存しないバクテリアDNA編集技術などを、CasおよびCasを超えた機能性タンパク質の探索と利用を概観。
8.[レビュー] メッセンジャーを射る:RANを標的とするCRISPR-Casシステム
  • "Shooting the messenger: RNA-targeting CRISPR-Cas systems" Zhu Y, Klompe SE, Vlot M, van der Oost J, Staals RHJ. Biosci Rep. 2018 May 10.
  • タイプⅢシステム:構成;スペーサー獲得機構;ヌクレアーゼ活性;配列特異的RNA切断;非特異的ssDNA切断;非特異的RNA分解;免疫機能 (標的はRNAかDNAか、溶菌か溶原か、ファージ変異への対応、細胞死への関与は)
  • タイプVIシステム:Cas13変異体の結晶構造と機能と謎
9.食卓の上の遺伝子編集作物 - CRISPRキャベツの物語
  • "Gene-edited plants on the plate – the “CRISPR cabbage story" Jansson S. Physiol Plant 2018 May 10.
  • 著者自身の経験に基づいて、主として欧州における現行のGMO (遺伝子組み換え作物)規制の解釈および運用の問題点を指摘
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