[出典] "Custom selenoprotein production enabled by laboratory evolution of recoded bacterial strains" Thyer R [..] Ellington AD. Nat Biotechnol. 2018 June 4 . セレノシステイン (Sec)は,システインの硫黄原子 (S)がセレン原子 (Se)に置き換わったアミノ酸であり、細胞内では希少な (rare)存在であるが、生物は、このSecをタンパク質に取り込むことで、反応性が高く高濃度では有毒なセレンの生理活性を安全に活用している (ライフサイエンス新着論文レビュー、2010*)。 この現象に倣って、タンパク質にSecを取り込ませることで、ヒト細胞内および血中でのタンパク質薬剤の安定性を高める試みがなされている。ヒト体内での薬剤の安定性向上は、薬剤の小型化や投薬の低頻度化、ひいては、医療費と副作用の抑制にも貢献する。 薬剤候補の組換タンパク質へのSec取り込みは、終止コドンをSecコドンに読み換えるにcis- およびtrans- に作用する多数のタンパク質とRNA因子を必要とする複雑なパスウエイを辿る。このため、タンパク質生産発現に広く利用されてきた大腸菌プラットフォームによって、セレノシステインを帯びた組換えタンパク質 (以下、セレノプロテイン)を作出することは困難であった。遺伝子の非効率的翻訳やセレノシステイン生合成に起因する毒性の問題に加えて、セレノシステインtRNAはUGAコドン結合において終結因子 (release factor)に劣り、タンパク質全長の発現に至らない問題も抱えていた。このため、新規セレノプロテインは大腸菌発現系よりは化学合成に依存してきた。 UT Austin の研究チームは今回、先行研究で開発したアンバー終止コドン (UAG)をSecに読み換えるE. Coli tRNA Sec 変異体から、指向性進化によってセレノプロテインの産生に最適化した大腸菌株を確立した。Enterobacter cloacae 由来の
bla NMC-A 遺伝子 (Se-Se結合 (ジセレニド)依存性βラクタマーゼ) を組み込むことで、指向性進化の全過程にわたり大腸菌株のセレノシステイン依存性が維持され、21番目のアミノ酸であるセレノシステインまで拡張された遺伝暗号が維持されるに至った。蛍光タンパク質レポーターでセレノシステインの取り込みをin vivo で定量したところ、UAGコドンが100%セレノシステインに翻訳されていた。 抗体フラグメントに見られる不安定なジスルフィド結合をジセレニド結合に置換することで、抗体フラグメントの安定性が向上した。 参考:
tRNA Sec の構造とセレノシステイン生合成経路
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