• [出典] "Genomic atlas of the human plasma proteome" Sun BB, Maranville JC, [..] Butterworth AS. Nature 2018 June 6.
  • 血漿プロテオームは、生物学的過程を直接左右し、環境や疾患と相関して変動する。また、血漿プロテオームは個人間でも変動し、遺伝するとされている。このため、血漿タンパク質群は精密な治療の標的として有力であるが、遺伝的変異と血漿中のタンパク質レベルの相関に関するデータは限られていた。確かにこれまでに細胞内のタンパク質のレベル (量)に関与する遺伝子座 (pQTLs)の同定が試みらてはいるが、ヒトの初代細胞ではなく細胞株を試料とする小規模な実験であった。
  • ケンブリッジ大学のAdam S. Butterworthとメルク社MRLのHeiko Runzが率いる国際共同研究チームは、2012年から2014年に50,000人の協力者を得て行われた適正な献血の頻度を探る英国のプロジェクトINTERVAL studyの一環として、SomaLogic社のSOMAscanにより、健常人3,301人の献血由来の血漿中タンパク質3,622種類を定量し、タンパク質レベルと相関する遺伝子領域pQTLsを判定した。
  • その結果、1,478種類のタンパク質と764箇所のゲノム領域が相関することを見出し、このpQTLsの89%が新奇であった。64箇所のゲノム領域のうち、66% (n=502) 箇所がタンパク質コーディング領域とcisの関係にあり、転写開始点から200 kbと100 kbの範囲および遺伝子内部に位置する領域がそれぞれ95%、87%および44%を占めた。
  • Cis pQTLsと既報のmRNAの発現に相関する量的形質遺伝子座eQTLsとを照合したところ、cis pQTLsの40% (n=224)が、同一遺伝子のeQTLsと一致するなど、タンパク質発現量が遺伝子発現量によって決まる傾向にあることが示唆された。
  • 764箇所のゲノム領域のうち262箇所は、のべ1,104種類のタンパク質とtransの関係にあり、4種類より少ないタンパク質と相関するtrans遺伝子座が82%を占めたが、20種類以上のタンパク質と相関する12箇所の'ホットスポット'を見出した。
  • pQTLs、eQTLs、GWASからの病因候補変異データ、既存薬の適応症データを組み合わせることで、特定の疾患に特徴的な血漿タンパク質のスペクトラムや、特定の血漿タンパク質のスペクトラムを調節可能な薬剤の探索が可能になり、ひいては新たな創薬標的の探索や、既存薬のリパーパシングが可能になる。
  • データ公開Webサイト:http://www.phpc.cam.ac.uk/ceu/proteins/
  • 血漿プロテオーム解析関連情報:[プレスリリース]日本人多層オミックス参照パネル公開―日本人集団の血漿のメタボローム&プロテオーム解析が完了― 2015年7月2日. 日本医療研究開発機構 (AMED) News;[Webサイト] Japanese Multi Omics Reference Panel