1.[ビデオプロトコル]広汎な細胞とモデル生物の精密かつ効率的ゲノム編集を可能とするCas9 RNP
- [出典] "Enhanced Genome Editing with Cas9 Ribonucleoprotein in Diverse Cells and Organisms" Farboud B, Jarvis E, Roth TL, Shin J, Corn JE, Marson A, Meyer BJ, Patel NH, Hochstrasser ML. J Vis Exp. 2018 May 25;(135), e57350. (PDF版はこちら)
- Cas9 RNPのヒト初代細胞へのエレクトロポレーション (T細胞;造血幹細胞・前駆細胞)および線虫生殖腺 (gonad)へのマイクロインジェクションと甲殻類モデルParhyale hawaiensis胚へのマイクロインジェクションを例示
- 参考crisp_bio記事:CRISPRメモ_2018/03/04 - 1. i-GONAD:CRISPRヌクレアーゼによる安定したin situ生殖細胞ゲノム編集法
[出典] "DnaQ exonuclease‐like domain of Cas2 promotes spacer integration in a type I‐E CRISPR‐Cas system" Drabavicius G, Sinkunas T, Silanskas A, Gasiunas G, Venclovas Č, Siksnys V. EMBO Rep. 2018 Jun 11.
ほとんどのCRISPR-CasシステムでCas1とCas2が外来DNAからのスペーサ獲得(adaptation)に必須である。Streptococcus thermophilus DGCC7710 タイプI‐E CRISPR4‐Casでは、Cas2タンパク質にDnaQエンドヌクレアーゼ・ドメインが融合し、Cas1:Cas2-DnaQ複合体を構成している。プロトスペーサの3’末端オーバーハングをDnaQが切り離し、Cas1:Cas2-DnaQがスペーサをCRISPRアレイに挿入する。
3.ゲノム編集の効率をin vivo事前評価可能とする簡便なSKLPT imaging法を開発
- [出典] "SKLPT imaging: Efficient in vivo pre-evaluation of genome-editing modules using fluorescent protein with peroxisome targeting signal" Konno R, Tanaka H, Kodama Y. Biochem Biophys Res Commun. 2018 Jun 12.
- ハプロイドであり、CRISPR-Cas9によるゲノム編集がすでに行われているゼニゴケ (Marchantia polymorpha)をモデルとして開発したSKLPT imagingは、Serine-Lysine-Leucine-mediated Peroxisome Targeting Imagingに由来する呼称であり、ペルオキシオーム局在化シグナルPTS1であるSKLの3アミノ酸の発現に依存する蛍光タンパク質の細胞内局在を利用する。
- ゲノム編集の標的とするDNA断片配列の上流に蛍光タンパク質配列を融合し、下流アウトオブフレームにSKLを2セット結合したプラスミドを構築し、標的DNA断片に1-bpまたは2-bpのindelが発生した場合は、SKLコーディング配列がstGFPコーデング配列に融合し蛍光タンパク質をペルオキシオームへ移行させる。一方で、フレームシフトが発生しないまたは3-bp indelが発生した場合は蛍光タンパク質は細胞質に局在する。この差異を共焦点顕微鏡で同定する。
3.クリプトコックス症さらに髄膜脳炎の原因菌であるクリプトコックス・ネオフォルマンスと類縁種のCRISPR-Cas9遺伝子編集
- [出典] "Two Distinct Approaches for CRISPR-Cas9-Mediated Gene Editing in Cryptococcus neoformans and Related Species" Wang P. mSphere. 2018 Jun 13.
- CRISPR-Cas9をRNPでエレクトロポーレションする手法と、Cas9とgRNAを一体化したDNAプラスミドpCnCas9:U6-gRNAで送達する手法で、これまで困難であったクリプトコックス菌の遺伝子置換を実現。
4.エンハンサーの必須性を確認するにはノックアウト実験が必須
- [出典] "Genomic Knockout of Two Presumed Forelimb Tbx5 Enhancers Reveals They Are Nonessential for Limb Development" Cunningham TJ, Lancman JJ, Berenguer M, Dong PDS, Duester G. Cell Rep. 2018 Jun 12;23(11):3146-3151.
- Tbx5は前肢発生必須遺伝子である;これまでに、外来遺伝子レポータに依存した実験でTbx5に2種類のエンハンサーが推定されていた;今回、マウスとゼブラフィッシュにおけるCRISPR/Cas9による推定エンハンサーのノックアウト実験から、その必須性が否定された;生物過程に必須な内在エンハンサーの同定にはノックアウト実験での検証が必要。
5.SUMO2とSUMO3は非古典的経路を介してI型インターフェロン産生を負に制御する
- [出典] "SUMO2 and SUMO3 redundantly prevent a noncanonical type I interferon response" Crowl JT, Stetson DB" Proc Natl Acad Sci U S A. 2018 Jun 11.
- CRISPR-Cas9により一連の遺伝子ノックアウト結果の解析にもとづいて発見
- [出典] "Staphylococcus aureus targets the purine salvage pathway to kill phagocytes" Winstel V, Missiakas D, Schneewind O. Proc Natl Acad Sci U S A. 2018 Jun 11.
- ヒト病原菌S. aureusの免疫回避には、細胞障害性のデオキシアデノシン (deoxyadenosine:dAdo)を好中球細胞外トラップ (neutrophil extracellular traps: NETs) から合成してマクロファージを障害する過程が寄与することは明らかになっていたが、dAdoがマクロファージを細胞死に誘導するシグナル伝達経路は不明であった。
- 今回、CRISPR-Cas9によるゲノムワイド・ノックアウト・スクリーンにより、dAdoがプリン・サルベージ経路に干渉して、カスパーゼ3依存でマクロファージを細胞死へ誘導することを同定した。
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